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多少とも政治に関心があれば、天皇制の帰趨は気になるところでしょう。
このまま成り行きに任せているとどうなりそうか、考えを巡らせてみました。


順当に行けば、現在の皇族のなかでは悠仁親王が最後の天皇として即位することになるでしょう。問題はその次の天皇がどうなるかです。


悠仁親王が天皇として崩御する前に嫡男が誕生すれば、現状の皇室はひとまず維持されるでしょう。この場合、諸問題の先送りに成功したと言えます。


しかしながら、近代的な一夫一妻制では(皇女は生まれても)皇太子となるべき男児が生まれてこないおそれがあります。皇室典範第一条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」とされていますから、このような事態になれば、天皇制は存亡の危機に直面します。


そのため、解決策として取り沙汰されることのあるのが側室制度の導入です。たしかに、側室が男子を出産すれば皇室典範に則った正当な継承者として見なすことが(法理的には)可能でしょう。

とは言え、今は21世紀です。さすがに時代錯誤すぎて、世論も同調しないのでないでしょうか。また、国際社会でも物笑いの種になりかねません。特にフェミニストからは猛反発を食らうことが必至です。したがって、この案はまずもって採用されないでしょう。


現実的には、皇室の外部(=民間)で生まれた「皇統に属する男系の男子」が皇位を継承することになりそうです。

この場合、
臣籍降下した一族からの即位となり、(形容矛盾ですが)「臣民天皇」が誕生します。天皇制はおそらく皇室典範を改正することなく存続するでしょうが、いきおいカリスマ性が希薄化するおそれが残ります。また、一般人なら憲法上保障されている(移動の自由などの)数々の人権が即位によって剥奪される点も議論されるのではないでしょうか。


民間出身の天皇が皇位に順応できなかった場合、高齢を理由としない退位も選択肢として議論されることになるでしょう。こうして在位の短期化がすすめば、必然的に不便になる元号は廃止へと追い込まれるかもしれません。


また、本来これは臣籍降下した一族に限りませんが、男系男子主義である以上、不貞行為による妊娠・出産(いわゆる「托卵」)の可能性は排除できません。この問題に厳格に対応しようとすれば、皇位継承者に遺伝子検査を実施する必要がありますが、今度は「プライバシーの侵害」という別の問題が生じてしまうでしょう。「大事の前の小事」とばかりに本人の意向を無視するのも現実的ではありません。皇位継承者が検査を拒否するのなら、下位継承資格者を繰り上げるなどの措置も俎上に載せられるでしょう。そして、もし検査なしで皇位が継承されれば、事実上それは「万世一系」論からの正当性の剥奪と見做せるでしょう。


男系男子による皇位継承に固執してもおそらく天皇制は消滅しませんが、変質することはあり得ます。そうなったとき、国民は天皇制について再考を迫られるでしょう。



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